【家庭崩壊】5人家族で「2人乗り」のS2000を所有するバカの末路

ステップワゴンのカタログに「定員8人。実質二人。」と書かれたアイキャッチ画像

世の中には「計算」という概念がある。 1+1は2であり、5人家族なら最低でも5つの椅子が必要だ。これが義務教育を終えた大人の常識である。

だが、俺のガレージを見てほしい。 そこには、ホンダが誇る至高の2シーター「S2000」が鎮座している。椅子は2つ。家族は5人。

引き算すらできないバカだと思われただろうか? 否。これはバカなのではない。圧倒的な「愛」の計算式なのだ。

■ステップワゴンという名の「免罪符」

もちろん、俺だって鬼ではない。 我が家には「移動式リビング」ことステップワゴンが完備されている。 3列シート、スライドドア、快適なエアコン。そしてわくわくゲートという最高のドアまでついている。家族全員が笑顔でマックを食べながら移動できる、まさに「正義の塊」のような車だ。

ステップワゴンを運転している時の俺は、家族を愛する「良きパパ」である。 ディズニーのDVDをセットし、嫁の買い物袋をトランクに積み、法定速度を遵守する。

だが、その時、俺の魂は死んでいる。 バックミラーに映る幸せそうな家族の光景を見ながら、俺の右足は、あっちの(S2000の)オルガン式ペダルを踏み抜きたいと、痙攣(けいれん)しているのだ。

■「いつ売るの?」という絶対零度の問いかけ

家族旅行の荷物を、ステップワゴンの広大な荷室に放り込んでいる時、事件は起こる。 ふと隣に目をやった嫁が、冷ややかな声でこう呟くのだ。

「ねえ、あの黄色い車1台分で、あと何回ディズニーに行けるか知ってる?」

……知るわけがない。 計算した瞬間に、俺のS2000は「ミッキーマウスの耳」数千個分に変換されて消えてしまうではないか。

嫁の視線は、もはや「0度」を通り越して「絶対零度」だ。 「2人しか乗れない車を維持する維持費で、どれだけ子供の習い事を増やせるか」というロジカルな正論に対し、俺にできることはただ一つ。

「聞こえないふりをして、ステップワゴンのスライドドアを静かに閉める」

これだけなのだ。

■「自分」を取り戻すための聖域

なぜ、これほどの圧力を受けてまでS2000を手放さないのか。 それは、ステップワゴンで「パパ」という役割を演じ続けるために、「ただの俺」に戻る時間が必要だからだ。

9000回転まで一気に突き抜けるVTECの咆哮。 路面の砂利一つひとつまで伝えてくるステアリング。 あのタイトなコックピットに収まった瞬間、俺は「3児の父」から「一人のドライバー」へと解脱(げだつ)する。

家族を幸せにするためには、まず俺が正気でなければならない。 つまり、S2000を維持することは、巡り巡って「家族の平和」を守ることに直結しているのだ。(※個人の見解です)

■今日を生き延びるための「ついで買い」

とはいえ、正論だけでは家庭内のヒエラルキーは守れない。 ステップワゴンで家族サービスをした帰り道、俺は必ずこう提案する。

「今日はみんな頑張ったから、コストコで一番デカいピザ買って帰ろうぜ!」

S2000では物理的に不可能な「大量買い」をステップワゴンで演出し、家族の胃袋を満たす。これぞ、「機動力の無駄遣い」を「実用性の暴力」で相殺する高等テクニックである。

皆さんも、もし家族に内緒で2シーターを買いたくなったら、まずはミニバンのカタログを嫁に差し出すことから始めてほしい。 飴(ミニバン)を与えずして、鞭(S2000)を振るうことは不可能なのだから。

・・・・

こうして今日も、我が家のガレージには「家族の幸せ」と「俺の狂気」が仲良く並んでいる。

先日、家族で唯一S2000に好意的な長女がが言った。 「パパ、私が免許取ったら、その黄色い車(S2000)ちょうだいね!」

長女よ、よく言った。お前は最高の後継者だ。 だがな、その横で般若(はんにゃ)のような顔をしてこちらを見ているママの視線に、お前はいつまで耐えられるかな?

俺たちの戦いは、まだ始まったばかりなのだ。

この記事を書いた人

製薬会社で論理(ロジカル)を武器に生き残る中年サラリーマン。だが、一歩会社を出れば、絶滅危惧種のオープン2シーター「S2000」を愛でるただの変態である。

20年以上の付き合いになる相棒の維持費に悲鳴を上げ、三井ダイレクトには門前払いされ、夏は家族から「走るサウナ」と罵られる日々。それでもVTECが弾ける瞬間、すべての苦労は「至高の悦び」へと昇華するのだ。

このブログでは、そんな「愛」と「工夫」で名車と心中する男のリアルな軌跡を、嘘偽りなく書き綴る。

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