【狂気】ホンダS2000のF20Cエンジンが「伝説」と呼ばれる理由。9,000回転の深淵に迫る S2000の魅力(エンジン編)

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俺たちは移動手段ではなく「F1エンジンのデッドコピー」を買ったのだ

「普通の車なら、エンジンがバラバラになる回転数。そこが、S2000の『日常』だ。」

正直に言おう。S2000という車は、ホンダが創立50周年に浮かれて、勢い余って「公道を走れるレーシングカー」を世に放ってしまった事故のようなものだ。

特に初期型(AP1)に搭載された「F20C」ユニット。こいつは2.0リッターNA(自然吸気)でありながら、250馬力を叩き出す。リッターあたり125馬力。この数値は、あのフェラーリ・458イタリアが登場するまでの約10年間、「量産車世界最高の馬力効率」の座を独占し続けていたのだ。

【技術の深淵】9,000回転を実現させた「変態的」な中身

なぜ、こいつはバイクのように回るのか? その裏側には、ホンダがF1で培った金属工学の暴力が詰まっている。

【F20Cが「化け物」と呼ばれる3つの理由】

  • FRMシリンダーライナー:アルミに炭素繊維をぶち込んだ、鉄より硬くて軽い魔法の壁。
  • 鍛造アルミピストン:量産車のコストを完全に無視した、超軽量・高剛性パーツ。
  • ピストンスピード 25.2m/s:当時のF1エンジンに匹敵する、物理的限界ギリギリの速さ。

「突き抜けるAP1」か「厚みのAP2」か。終わらない聖戦

2005年、排気量を2.2リッターに拡大した「F22C」が登場したことで、S2000界隈には巨大な派閥争いが生まれた。

  1. AP1(2.0L):9,000回転まで突き抜ける、麻薬的な高揚感。
  2. AP2(2.2L):低中速トルクを増強し、実戦的な「速さ」を追求した洗練。

「8,000回転しか回らないのはS2000じゃない」と叫ぶ原理主義者もいれば、「街乗りで使いやすいAP2こそ至高」と語る現実主義者もいる。

どっちがいいかなんて、究極の贅沢な悩みだ。牛丼の「つゆだく」か「ネギだく」か選ぶのと同じくらい、外野から見ればどうでもいいが、俺たちにとっては死活問題なのだ。

官能の代償。この「工芸品」を維持する覚悟

だが、忘れてはいけない。このエンジンは精密な工芸品だ。 F20Cのシリンダー(FRMライナー)は特殊すぎて、一般的なボーリング加工によるオーバーホールができない。つまり、焼き付かせたり寿命が来たりすれば、即「エンジン載せ替え」か「超高額な特殊修理」が待っている。

オイル管理の一つとっても、普通の車と同じ感覚でいてはいけない。常に最高級のオイルを使い、常に五感を研ぎ澄ます。このヒリついた緊張感こそが、S2000を所有する「悦び」そのものなのだ。

【結び】9,000回転の咆哮を、歴史の1ページに刻め

もう二度と、こんなエンジンは世に出ない。 カーボンニュートラルや効率化の波に飲まれ、こうした「無駄なほどに熱い機械」は絶滅していく運命にある。

だからこそ、俺たちは回し続ける。VTECが切り替わった瞬間の、あの金属的な咆哮。 もし君が、まだこの「劇薬」を味わっていないなら、手遅れになる前にハンドルを握るべきだ。

この記事を書いた人

製薬会社で論理(ロジカル)を武器に生き残る中年サラリーマン。だが、一歩会社を出れば、絶滅危惧種のオープン2シーター「S2000」を愛でるただの変態である。

20年以上の付き合いになる相棒の維持費に悲鳴を上げ、三井ダイレクトには門前払いされ、夏は家族から「走るサウナ」と罵られる日々。それでもVTECが弾ける瞬間、すべての苦労は「至高の悦び」へと昇華するのだ。

このブログでは、そんな「愛」と「工夫」で名車と心中する男のリアルな軌跡を、嘘偽りなく書き綴る。

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