いいか、S2000という車は「素のままでも最高」だ。ホンダが創立50周年を記念して世に放った、あの究極のハンドリングマシンを、わざわざ弄くり回す必要なんて本来はないのかもしれん。
だが、一度でもVTECの快楽を知り、その限界の「先」を覗きたいと願ってしまったが最後、俺たちは迷宮に迷い込むことになる。そう、「どこで、何を買うか」という、終わりのないチューニング沼だ。
世の中には星の数ほどショップがある。安さを売りにする店もあれば、見た目の派手さを競う店もある。だが、酸いも甘いも噛み分けてきた俺に言わせれば、S2000を託すべき場所は、たった数カ所の「聖地」に限られるのだ。
今回は、俺が「ここなら間違いない」と断定する3つの大所――SPOON、ASM、そして無限――について語らせてもらおう。
各社の凄まじいこだわり、本田宗一郎のDNAを継ぐ歴史、そして……俺が安さに目が眩んで**「次点詐欺」という地獄を見た悲惨な実体験**まで、隠さずすべてをさらけ出す。
これを読んでいるお前が、俺と同じ過ちを繰り返さず、最短ルートで「本物のS2000」に辿り着くためのバイブル。それがこの記事だ。
覚悟はいいか? 銀行残高を確認してから、この先を読み進めてくれ。
1. SPOON(スプーン):市販車を「レーシングカー」の高みへ

まずはSPOONだ。ホンダのスポーツタイプ乗りならば青いロゴでSPOONを見る事は絶対あるはずだ。そして現在もスーパー耐久レース(S耐)に参戦をしているので個人的には馴染み深い。
スプーンの哲学は、単なるチューニングによるパワーアップではない。それは「ホンダが目指した理想の姿を、一切の妥協なく具現化すること」だ。
- エンジンの精密バランス: スプーンのコンプリートエンジンは、純正の許容誤差をさらに追い込み、ピストンやコンロッドの重量をグラム単位で合わせ込む。その結果、VTECが切り替わった瞬間の吹け上がりは、もはや別物。シルクのように滑らかで、かつ暴力的な加速を味わえる。
- 「青と黄」の信頼性: 彼らはS耐などの過酷なレースでパーツを鍛え上げる。壊れないことが前提の「究極の耐久性」があるからこそ、俺の車に7点もついているんだ。
- タイプワン(TYPE ONE): 荻窪にある直営店は、作業風景がすべて見える。あの清潔感とプロ意識を見れば、「ここに任せれば間違いない」と断定せざるを得ないだろう。
2. ASM(エーエスエム):世界一美しい「大人のS2000」を作る

横浜にあるASMは、チューニングショップの概念を覆す「ブティック」のような場所だ。だが中身は、世界一S2000を愛する変態たちの集まり(褒め言葉だ)である。筑波サーキットでのタイムアタックから一気に有名になったように思える。筑波サーキットでS2000のNAで57秒台は当時は日本中に衝撃が走った。
- 究極のボディ剛性: タワーバー一本取っても、ASMのこだわりは異常だ。単に固めるのではなく、車の「いなし」を計算し尽くしたISデザインのパーツは、装着した瞬間に乗り心地すら上質に変える。
- 「音」と「美」のサクラム: ASMがプロデュースするサクラム製マフラーは、もはや管楽器だ。高回転域での官能的な鳴きは、聴くたびに「S2000に乗っていて良かった」と自意識を爆発させてくれる。価格もそれなりにするがサーキットユースでないならば間違いなく欲しい一品。
- 一生モノのレカロ: 世界一のレカロシート販売実績を持つ彼らのノウハウは、腰痛持ちのS2000乗りにとっての救世主だ。俺のように「少しでも安く」とオークションに逃げて詐欺に遭う前に、ここへ相談に行くのが正解なのだ。
売っているパーツはただ高いだけじゃない。ASMには筑波57秒を叩き出した『101号車』という生きた教材がある。そこで削り出された1/1000秒のデータが、俺たちの街乗りパーツにまで宿っているんだ。 特にサクラムマフラーなんて、もはや執念の産物だ。『音色』のためだけに構造を煮詰め抜くその姿勢は、ショップというより職人集団。俺がオークションで詐欺に遭ってまで欲しがったのは、その『職人の魂』を安く手に入れようとした俺の弱さゆえだったのだ……
3. 無限(MUGEN):HRC直系の「威光」と「計算」

無限はかつて、世界最高峰のF1にエンジンサプライヤーとして参戦し、通算4勝を挙げている。 S2000の心臓部であるF20Cエンジンも、当時のホンダのレーシングテクノロジーが凝縮された傑作だが、無限はその「本家」が作ったエンジンをさらに知り尽くした上でパーツを開発している。 俺たちが無限のエンジンパーツ(カーボンエアクリーナーボックスやエキマニなど)を付けるということは、「F1の血を愛車に輸血する」のと同義なのだ。
無限を語るなら、その成り立ちを知っておかなければならない。 1973年、無限は本田宗一郎の長男・本田博俊氏によって設立された。
「ホンダの御曹司が作った会社なら、親の七光りだろう」なんて思う奴は、何も分かっていない。事実はその真逆だ。本田宗一郎という男は、自分の身内をホンダの後継者にしないと公言していた。だからこそ、博俊氏は「ホンダの枠に収まらない、もっと尖った、もっと速いホンダ車」を作るために、自ら退路を断って無限を立ち上げたのだ。
- 「ホンダであって、ホンダではない」: 無限はホンダの完全な子会社ではない。あくまで独立した「コンストラクター(競技車両製造者)」だ。この絶妙な距離感があるからこそ、純正では到底不可能な「コスト度外視の狂ったパーツ」を世に送り出すことができる。
- 「無限」の名に込められた想い: 文字通り「無限に広がる可能性」と、何事にも縛られない自由な発想。ホンダが量産メーカーとして「万人のための車」を作る一方で、無限は「一人の熱狂的なドライバーのための武器」を研ぎ澄ましてきた。
- エンジンの無限: かつてF1でベネトンやジョーダンにエンジンを供給し、表彰台の頂点に立った。あの伝説の「MF301H」エンジンを作った男たちが、俺たちのS2000のパーツを設計しているという事実。これ以上のロマンがこの世にあるか?
……と、ここまで偉そうに各社の哲学を語ってきたが、ここで俺の「潔い懺悔」を聞いてくれ。
実は過去に、どうしてもASMのマフラーが欲しくてな。だが新品は目玉が飛び出るほど高額だ。そこで賢いつもりでオークションを覗き、「少しでも安く浮かそう」と姑息な真似をした結果……見事に「次点詐欺」に引っかかった。
「次点詐欺って何?」という幸せな奴らに教えてやる。落札できなかった俺のような人間に、出品者を装って「落札者がキャンセルしたので、あなたが次点で当選です!直接取引しましょう」と甘いメールを送り、金を振り込ませてドロンする、古典的かつ卑劣な手口だ。
浮かすどころか、金だけをドブに捨てて「本物のパーツ」は1ミリも手に入らなかった時のあの虚無感。S2000のコクピットで一人、震えた夜を俺は一生忘れん。「本物に近道なし」。この教訓を、俺は血(と金)を流して学んだのだ。
さらにSPOONだ。S耐(スーパー耐久)に行くたびにブースに寄り、親切にカタログをもらうんだが、あれはただの冊子じゃない。開いた瞬間に理性を焼き切る「魔法の注文書」だ。 「見るだけ、見るだけ……」と自分に言い聞かせながらページを捲るたびに、なぜか愛車にSPOONのパーツが増えていく。気づけば今や7点。
幸い、不具合一つ出ない「超絶信頼性」のおかげで今日もVTECを堪能できているが、俺の銀行残高だけは絶賛「オーバーヒート中」なのだ。
良い子のみんな。パーツは正規のルートで、計画的に買おうな。 俺のように「カタログの奴隷」になり、詐欺師に貢ぎ、それでもなお「次はどこをいじろうか」とニヤついている……そんな狂った世界に足を踏み入れたいなら、俺はいつでも歓迎するぜ。





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