ぶっちゃけ、S2000の「吸気系チューニング」は、これまで地雷原を歩くようなものだった。
ネットを開けば「剥き出しのキノコ型を入れたら遅くなった」「純正の箱に穴を開けたら低速トルクが消え失せた」という阿鼻叫喚の嵐。 そう、ホンダが威信をかけて作ったS2000(AP1/AP2)のF20C/F22Cエンジンにおいて、「純正のエアクリーナーボックス」は、神の領域にある完成度を誇っていたのだ。
だが、あの「鳴くマフラー(管楽器)」で世界中のエンスージアストを狂わせる有限会社サクラム(SACLAM)が、今、この難攻不落の「吸気」に挑んでいるという情報をキャッチした。 バッテリー上がりによりS2000に乗れないストレスで脳がバグりかけている俺は、この件について調査を行った。
結論から言おう。 サクラムが作ろうとしているのは、単なる「空気の通り道」ではない。S2000が20年以上抱え続けてきた「熱の呪い」を解き放つ、究極のロジカル・デバイスなのだ。
① そもそも「純正の箱」はなぜ最強で、何がダメだったのか?

S2000の純正エアクリーナーボックス。見た目はただの黒いプラスチックの箱だが、中身は流体力学と音響工学のバケモノだ。 2100rpm、4200rpm、6300rpm、そして8400rpm……特定の回転数で空気が「共鳴」し、エンジン内に空気を押し込む(充填効率を上げる)ように、ミリ単位で計算され尽くしている。 素人が下手に箱をぶった切ったり、社外品に変えたりすれば、この「ホンダ・マジック」が崩壊し、確実にパワーダウンする。 これがS2000界隈の常識だった。
だが、この完璧に見える純正システムには、「ECUを欺く、致命的なバグ」が隠されていた。
それが「吸気温度(IAT)センサー」の配置だ。 AP1の場合、このセンサーは熱々のエンジンに直結された「インテークマニホールドの金属部分」に直接ブチ込まれている。
これが何を意味するか? エンジンが吸い込んでいる「実際の空気の温度」ではなく、「エンジンの熱でチンチンに熱せられた金属の温度(ヒートソーク)」を測ってしまうのだ。
実際俺のS2000(AP1)でも純正設置場所では吸気温度はすぐに跳ね上がる。
15分アイドリングしただけで、センサーの数値は100度近くまで跳ね上がる。 ECUは「うわ! 吸気温度が100度だ! エンジンが壊れるからパワーを絞れ!」とパニックを起こし、点火時期を大幅に遅らせる(遅角制御)。 実際には、走り出せば外気と同じ冷たい空気を吸っているのに、センサーが「熱い」と嘘をつき続けるせいで、S2000は常に「パワーダウン状態」を強いられていたのである。
「夏場や渋滞後にS2000がクソ遅くなる現象」。 その真犯人は、吸気抵抗ではなく、この「バグった温度センサー」だったのだ。なのだ。
② SACLAM(サクラム)という、愛すべき「変態的職人集団」

ここで、サクラムという会社について語らねばなるまい。
埼玉県に拠点を置くこの会社は、単なるマフラー屋ではない。「音響工学に基づいたエキゾーストノートの調律」において、業界で唯一無二の存在だ。 ルノー、ポルシェ、GT-R……数々の名車に「楽器」のようなマフラーを提供してきた。しかも、コンプライアンス(車検対応)には異常なほど厳格で、1台ずつ車検証と照らし合わせて認可プレートを発行するという、メーカー顔負けの管理体制を敷いている。
S2000においてはASMとの共同開発によるマフラーは有名だ。管楽器のような綺麗で澄んだ排気音は運転手のみならず車外で聞いている人をも魅了する超絶な一品だ。音だけでなく美しい工芸品としても有名である。
そして、この会社を率いる宇野代表。 この男がヤバい。 過去には、フォーミュラカー(FJ1600)の過酷なレース現場で、7000rpm以上回すとクランクシャフトがぶっ壊れるエンジンの「限界強度」と格闘してきた、ガチのレースメカニックなのだ。
「感覚や見栄えでパーツは作らない。すべては金属工学、流体力学、熱力学のロジックで決まる」。 それが宇野氏の哲学だ。事実、今回のS2000用エアボックスの開発中、無理な前傾姿勢でエンジンルームを覗き込みすぎた結果、重度の腰痛と神経痛を発症し、MRI送りになるまで実車フィッティングを続けるという狂気(執念)を見せている。
命を削ってパーツを作る。それがSACLAMという会社なのだ。
③ なぜ「今」、サクラムはS2000のエアボックスを作るのか?

S2000の生産終了から15年以上。なぜ今さらなのか? それは、宇野氏が前述した「純正システムの熱害によるパワーダウン」という絶望的な事実を、精密な温度計測テスト(熱電対)によって完全に数値化してしまったからだ。
「空気をたくさん吸わせる」という旧来のチューニングは、もう限界だ。 サクラムが目指しているのは、「ヒートマスの影響を完全に排除した位置に吸気温度センサーを移設し、ECUに『本当の空気の冷たさ』を教え込むこと」にある。
現在、SACLAMは「2台体制」という自動車メーカー並みのコストをかけ、純正状態とプロトタイプを同時に走らせ、リアルタイムでデータを比較し続けている。
これは単なるドレスアップパーツではない。 S2000のECUの目を覚まさせ、F20C/F22C本来のシャープなレスポンスを、真夏でも渋滞後でも引き出すための「熱力学的ソリューション(解決策)」なのだ。
■ 結論:貯金をして待て。
現在も「遅れに遅れている」と公式ブログで公言されているこの開発。 だが、それでいい。サクラムの「妥協」ほど価値のないものはないからだ。
「S2000のチューニングは出尽くした? 笑わせるな。真のロジックに基づいた『吸気の夜明け』は、これから来るのだ。」
価格? 発売時期? そんなものはまだ分からない。 だが、あのASMと共同開発をしたマフラーを作り出した宇野氏が、神経痛に耐えながら生み出す「幻の箱」だ。期待できないわけがない。
ただ懸念点として価格と生産数量だ。SACLAMは限定いくつといった販売方法を取る事が多い。エアクリーナBOXで純正以外だと唯一無限製品が良いと思われるのだが、残念ながらすでに廃盤で手に入れる事はできない。
恐らく発売後すぐになくなることは想定される。俺のような貧乏リーマンに価格を含めて手を出せるか心配だが今から貯金をする価値は十二分にある。





コメント