マツダ・ロードスター。この名前を聞いて、敬意を払わない車好きがこの世にいるだろうか? 「世界で最も多く生産された2人乗り小型オープンスポーツカー」としてギネスにも載るその存在は、もはや生きた伝説。なかでも3代目となる「NC型」は、歴代で唯一、2リッターエンジンという強心臓を授けられた「ロードスター界の異端児にして完成形」なのだ。
見てくれ、あの豊満でマッスルなフェンダーを。そして、パワーに余裕が生まれたことで手に入れた、高速道路を矢のように突き進む安定感を。 先代までの「軽さこそ正義」という呪縛から解き放たれ、大人の余裕と、あらゆる路面をいなすサスペンションを手に入れたNCは、まさに「オープンスポーツの理想郷」と言っても過言ではない。
正直に言おう。 「オープンカーで楽しく、快適に、そして速く走りたい」 そう願う健全な精神の持ち主にとって、NCロードスターは100点満点、いや120点の正解だ。燃費もそこそこで悪くない、乗り心地も良い、そして何より壊れない。マツダが心血を注いで作り上げた「人馬一体」の極致がそこにはある。
……だが。 そんな「非の打ち所がない優等生」を目の前にして、なぜ俺は、耳を劈く爆音と腰を破壊する振動、そして底をついた通帳を抱えながら、わざわざ古いS2000にしがみついているのか?今回はあえて現行のND型ではなく 同じ2リッターという土俵に上がりながら、マツダが見せた「天国」と、ホンダが突きつけた「地獄」。その決定的な違いについて、今から語らせてもらおう。
なお写真は昔友人が乗っていた(現在は乗っていない)NCの写真だ。

NCが教えてくれた「本当の贅沢」
NCロードスターに乗って驚くのは、その懐の深さだ。 S2000と同じ2リッターでありながら、低速から溢れ出すトルク。シフトをサボってもスルスルと加速する従順さ。そして何より、あの「しなやかな足」だ。路面の凹凸を魔法のようにいなし、ドライバーに一切の不快感を与えない。
「ああ、車って本来こういう乗り物だったよな」
オープンにして海岸線を流せば、風は心地よく頬を撫で、カーステレオの音楽もしっかり聞こえる。NCは、ドライバーを「主役」にしてくれる最高のステージなのだ。

「回す楽しさ」の質が違いすぎる
だが、タコメーターに目をやった瞬間、俺たちの住む世界は分断される。 NCのエンジンは、実用域の使い勝手を極めた「極上の道具」だ。対して、S2000のF20Cは、回せば回すほど理性を焼き切る「狂った楽器」なのだ。
NCが「さあ、楽しく走りましょう」と微笑むのに対し、S2000は「お前、死ぬ気で踏めよ?」とナイフを突きつけてくる。 8000回転を超えたあたりの咆哮……あれを一度知ってしまうと、NCの洗練されたエンジンフィールが、まるで「お上品なクラシック音楽」のように聞こえてしまう。俺が求めているのは、耳を劈くヘヴィメタルなのだ。

快適さと引き換えに失った「毒」
NCは、すべてが「ちょうどいい」。パワーも、サイズも、操作感もだ。 だが、その「ちょうど良さ」こそが、俺のような欠陥人間には物足りない。 S2000にある「いつ牙を剥くかわからない緊張感」や「雨の日に乗るだけで命の危険を感じるスリル」。NCには、そんな不必要な毒が一切ない。毒がないからこそ、毎日乗れる。毎日乗れるからこそ、普通の人は幸せになれる。
……だが、俺は普通じゃなかった。ただそれだけのことなのだ。
どちらのオープンカーをオススメするか?と問われると俺は間違いなくロードスターをオススメする。特い現行のND型はパワーがない分軽さが最高にいい。それが最高のドライビングプレジャーを生む。車のメートル原器といってもいいぐらいに熟成が進んで世界で見ても最高の車の一つのはずだ。S2000とは同じような車で性格が全く違う。
それがあんな価格で手に入る日本は最高の国だ。マツダありがとう。ジャパンありがとう。
隣の芝生は、あまりにも「青すぎた」
結論を言おう。NCロードスターは「非の打ち所がない名作」であり、S2000は「ただの欠陥品」だ。
あちら側には、爽やかな風と、笑顔の助手席と、微笑みの嫁がいる。対してこちら側にあるのは、鼓膜を震わす爆音と、バキバキの腰、そして「これ以上は引き落とせません」というATMからの非情なメッセージだけだ。
まともな理性が1ミリでも残っているなら、君はマツダへ行くべきだ。だが、もし君が「幸せよりも刺激」を、「貯金よりも回転数」を選んでしまう、救いようのない業の深さを背負っているなら……。
悪いことは言わない。俺と一緒に、この真っ暗な沼の底で、家庭内序列「水槽のメダカ」以下として、誇り高く生きていこうじゃないか。VTECが弾けるその一瞬だけは、俺たちはこの世界の王になれるのだから。……その後、嫁に土下座する時間は、王様には含まれないけどな!





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