ハッキリ言おう。S2000という車は、走ってこそ真価を発揮する。 駐車場で文鎮化させている時間は、人生の損失以外の何物でもないのだ。
先日の「深夜3時のバッテリー交換作戦」により、僕の相棒は見事に蘇った。 ならば、次に行うべきは決まっている。リハビリドライブだ。
向かったのは、愛知県が誇る走りの聖地「矢作(やはぎ)ダム」。 結論から言えば、そこには「最高」と「最悪」が同時に存在していた。
今回の動画でのルートだ。一部区間だけを切り取ったので全体としては短いが雰囲気だけはなんとなくわかるだろう。
■ 目覚めるVTEC、聖地に響き渡る咆哮
キーを回した瞬間、一発で目を覚ますF20C。 やはりGTメカニック推奨のACデルコ(AMS60B24L)に狂いはなかった。
道中、アクセルを深く踏み込めば、VTECが切り替わる「あの瞬間」の衝撃が全身を突き抜ける。 聴け、この咆哮を。矢作の山々に響くこの音こそが、俺が取り戻したかったロジックの正解なのだ。
デジタル世界に轟くこのサウンドを聴けば、1ヶ月半の放置に対する罪悪感など、一瞬で吹き飛んでしまう。
■ 「オープンカー」という名の究極の贅沢
この日は快晴。となれば、トップを開けない理由がない。 マンションの近隣住民の目を気にしながら深夜に作業した苦労が、風と音に溶けていく。
「これだ、これこそがS2000だ!」
矢作ダムまでのワインディングを、VTECサウンドをBGMに駆け抜ける。 その瞬間、俺は間違いなく世界で一番自由なパパだった。……そう、「その時」までは。
■ 自由の代償は「涙」で支払うものだ。
さて、ここからが本題だ。 勘のいい読者ならお気づきだろう。この時期、日本の空を支配しているのは自由の風ではない。「花粉」である。
僕は花粉症だ。 出かける前、入念に点鼻薬をブチ込み、目薬をこれでもかと点火して戦場(峠)へ向かった。 「対策は完璧だ。今日の俺は無敵なのだ」と。
だが、オープンカーという乗り物を甘く見ていた。 一日中、屋根を開け放してワインディングを激走するということは、「巨大な掃除機になって花粉を全力吸引する」のと同義なのだ。
帰宅した俺を待っていたのは、感動の余韻ではない。 止まらない鼻水。 そして、ダムが決壊したかのように溢れ出す涙。
翌日、鏡に映った僕の目は、ボクシングの試合後かのように腫れ上がり、痒みで一睡もできない最悪の一日を過ごすハメになった。
ハッキリ言おう。自由の代償は、あまりにも大きすぎた。
しかし、後悔はない。 真っ赤に腫れた目でPCに向かい、この記事を書いている今の俺も、心だけは矢作ダムのワインディングを駆け抜けているのだから。





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