10月9日、金曜日。 仕事がひと段落したこの絶好のタイミングを見計らい、俺は思い切って有給休暇をブチ込んだ。
妻と子供たちからの「お前だけ一人で楽しそうだな」という氷のように冷たい視線が背中に突き刺さった
が、今回ばかりは振り返るわけにはいかない。行き先は静岡県にある「富士スピードウェイ」。山梨や神奈川にもほど近いこの聖地へ、名古屋から愛車S2000を走らせる2泊3日の大遠征である!時間にして約3時間。距離にして240km。
だが、ここで素直に「イェーイ!ドライブ最高!」と言い切れないのが古いスポーツカー乗りの悲しい性(さが)だ。 片道約3時間の長距離移動をS2000でこなすにあたり、俺の頭の中には常に「最悪の事態」がチラついていた。そう、少し前の記事でお伝えした「ピーナッツ破損事件」などの突発的トラブルである。

あんな意味不明な破損が出先で、しかも高速道路や見知らぬ土地で起きたらどうなる?……完全に詰みだ。レッカーを呼んで泣きながら名古屋へ帰るしかない。あんな悲劇が起きるかもしれないと思うと、正直ビビりまくっている自分がいた。
だがしかし!今回、俺にはどうしても富士スピードウェイに行かなくてはならない「絶対的な理由」があったのだ。
今回のレースに参加する某チームのメカニックとして、俺が勝手に「師匠」と仰ぎ、心から尊敬している人物が参戦しているのである。(S2000のメンテも長い事やってもらっている)
白状しよう。俺はこれまで「スーパーフォーミュラ」というレースを一度も見たことがない。 だが、そんなことは関係ない。自分が尊敬する男が、日本最高峰の舞台でメカニックとして戦っているのだ。その生き様を、この目で見届けずに何が車好きか。何がS2000乗りか。そんな激アツな思いが、冷ややかな家族の視線への恐怖や、車の故障へのビビりを凌駕したのである。

ちなみに、俺のように「スーパーフォーミュラってよく分からん」という読者のためにサクッと説明しておこう。 スーパーフォーミュラとは、国内最高峰のフォーミュラカーレースであり、純粋なコーナリングスピードだけで言えば「F1に次ぐ世界最速レベル」とも言われるバケモノたちの戦いだ。

あのF1への登竜門ともなっており、とんでもないG(重力)に耐えながら限界ギリギリで競い合う、まさに極限のモータースポーツである。ちなみに公式発表では5万人以上参加だったらしい。
俺の師匠は、そんな狂気の沙汰とも言える戦場でマシンを仕上げているのだ。胸が熱くならないわけがないだろう!ちなみに他にスーパーGT、S耐、GTワールドチャンレジにもメカニックとして参戦中らしい。
前置きが長くなったが、まずはガソリンスタンドでハイオクを腹一杯に補充し、いざ出陣だ。 道中は当然、フルオープン。秋の冷たい風を巻き込みながら新東名高速をひた走る。


途中、真正面に雄大な富士山が見えたため、俺は吸い込まれるように「清水PA」へとピットインした。 さすがは富士スピードウェイのお膝元・静岡県である。なんとPAの建物内に、ゴリゴリの「TRD 86」が鎮座しているではないか!



こんなもん、車好きなら足を止めないわけがない。「ちょっと小休憩のつもりが……」なんて言い訳をしながら、舐め回すように車を見学し、気づけば結構な時間をここで浪費してしまった。
そして、この清水PAでの痛恨のタイムロスが、俺の初日のスケジュールを狂わせることになる。 結論から言おう。この日、俺は富士スピードウェイに行くことができなかった。行くと言っていたのに・・すまん師匠。
実は今回、直前すぎたため近隣のホテルが生憎と全く取れず(目玉が飛び出るほど高い宿しか空いていなかった)、俺は人生初となる「ソロキャンプ」を決行することになっていたのだ。
ただでさえビビっている初めての一人キャンプ。「チェックインの時間が遅くなったら暗闇の中で遭難するかもしれない」という謎の恐怖心に勝てず、俺はサーキット行きを潔く諦め、キャンプ場へ直行するという本末転倒な決断を下したのである。
そんな俺が、初ソロキャンプの地として震えながら選んだのは、裾野市にある「みらくのキャンプ場」さんだ。

なぜここを選んだのか?理由は至極単純だ。
- 富士スピードウェイから遠くないこと
- 隣に24時間営業の「ファミリーマート」があること
- 近くに風呂屋があること
そう、初心者ソロキャンパーである俺にとって、「歩いてすぐコンビニがある」というのは最強のセーフティーネットなのだ!これなら夜中に腹が減ろうが、忘れ物をしようが、寂しさに押し潰されそうになろうが、ファミマの明るい看板がすべてを解決してくれる。寂しさなど微塵もない!
キャンプ場に到着して、俺は我が目を疑った。 なんと、今日ここでキャンプをするのは「俺一人」だというのだ。どうやら土日でもそこまで人が多くない上に平日は更に人が少ないらしい。
広大な芝生のフリーサイトを、愛車S2000と共に完全に独り占めである。オーナーからも「好きなところにテント張っていいよ!」と最高の許可をいただいた。
余談だが、ここのオーナーは隣で車屋さんも一緒に経営しているらしく、ふと見るとガレージにはチューニングカーが何台も入庫しているのが見えた。どこか凄腕の板金屋さんなのだろうか?
オーナーからは「こんな車(S2000)でキャンプに来るなんて〜(笑)」と温かいイジりを受けて少し気恥ずかしかったが、「うちの車屋の客にもS2000乗りがいるよ」という話から一気に意気投合し、大いに車談義に花を咲かせた。こういう出会いがあるのも遠征の醍醐味である。
さあ、ここからは一人でのテント設営だ。 心配だから動画に撮って作業は保存しておいた。何の参考にもならないがyoutubeにあげるかもしれない。

今回、S2000の狭いトランクに無理やり詰め込んできた俺のキャンプ道具一式は以下の通りだ。 ① テント(今回買った新品) ② コット(今回買った新品) ③ 寝袋 ④ テーブル ⑤ 乾電池式ランタン ⑥ イス ⑦ 調理道具(ナイフ、バーナー、ホットサンド作るやつ) ⑧ 折り畳み式クーラーボックスなど

俺は一応「家族キャンプ」の経験はあったため、買ってきたばかりの新品テントとはいえ、一人用テントの設営自体は拍子抜けするほど簡単に完了した。芝生の上にちょこんと佇む黄色いS2000と一人用テント。控えめに言って最高のビジュアルである。




夜は持参していたうどんを作り、酒を流し込んで大満足で初日を終えた。ちなみにうどんの汁を持ってくるの左側忘れファミリーマートにお世話になった。
「ソロキャンプ、最高じゃないか……」
そう悦に浸りながら寝袋に潜り込んだのだが、ここで予想外のトラップが発動する。 隣のファミリーマートに駐車している、大型トラックのアイドリング音がやたらと響いてくるのだ!
「安全第一」で選んだファミマの隣という立地が、まさか騒音という形で牙を剥いてくるとは。 結局、音が気になってすぐには眠れず、テントの中で1時間ほど本を読んで過ごすハメになった。若干眠りが浅かったような気もするが、まあ無事に朝を迎えることはできたからヨシとしよう。

いよいよ翌日は、本命「富士スピードウェイ」でのスーパーフォーミュラ観戦だ。 大ボリュームになるため、初日編はこの辺にしておこう。次回の記事に続く!


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