結論から言おう。俺は今、家庭内での立場を失った。
妻から「今日から大掃除を始めるから、あんたは邪魔だからどっか行ってて」と冷徹な宣告を受けたのだ。いや、正確には「手伝おうか?」と聞いてみたのだが、「あんたがいたら掃除が進まない。役立たずなんだから、どっか走りに行ってきなさい」と、慈悲深い(?)追放処分を食らったというわけだ。
というわけで、曇天の空を見上げ、灼熱を覚悟していた俺は「今日は絶好のオープン日和だ!」と自分に言い聞かせ、S2000のキーを捻った。行き先は愛知県豊川市と新城市にまたがる『本宮山スカイライン』だッ!

曇り空? いや、オープン乗りにとっては最高の「恵みの雲」なのだ。
S2000と辿り着いた「かつての聖地」
家から1時間半。そこそこ距離はある。だが、役立たずのレッテルを貼られた中年男にとって、1時間半のドライブは精神を浄化するための儀式だ。本宮山スカイラインは、かつて有料道路だった時代、バイクや車好きが挙ってブイブイいわしていたという歴史あるワインディングロードだ。現在は無料開放され、当時の荒々しさはなりを潜めているが、それでも道そのものの面白さは健在だ。

到着した本宮山スカイライン。この風景、たまらん。
だが、ここで俺の詰めの甘さが露呈する。動画を撮ろうと意気込んでいたのだが、スカイラインに入る直前でカメラの電源を切ったのが運の尽き。その後、再び電源を入れるという、人間なら誰でもできるはずの単純作業を、俺という「役立たず」は完全に忘却していたのだ。
おかげで、もっとも走りが楽しいエリアの映像も写真も、一切合切存在しない。すべては俺の脳内HDDに刻み込まれた。……これが本物の「心の目」で見るドライブってやつか? いや、単なるポンコツだ。
駐車場で出会った「過去の亡霊」たち
道中の休憩で立ち寄った駐車場で、愛車自慢の先客たちに出くわした。彼らとの会話がまた面白い。「昔はここ、バイクで膝を擦りながら飛ばす奴らがたくさんいてな」「車もガンガン飛ばす連中が多かったんだよ」と、当時の熱気を語ってくれた。
今のスカイラインは、当時の狂乱こそないが、静かに流すには最高の場所だ。飛ばす必要なんてない。ただS2000という機械と対話し、風を感じ、景色を愛でる。それだけで十分なのだ。役立たずと呼ばれた俺でも、この黄色のロードスターを駆れば、この瞬間だけは王様になれる。

Googleマップ上の本宮山スカイライン。次は完璧な撮影準備をして再攻略してやる。
結論:また行く
今回、動画の撮り高はゼロだった。だが、そんなことはどうでもいい。追い出された先で、これほど充実した時間を過ごせたのだから、妻には感謝せねばならんのだろうか? いや、やっぱり「役立たず」という言葉は撤回してほしい。
遠いのは難点だが、また行くぞ。次は絶対に、カメラの電源を入れ忘れないという、極めて高度なミッションを完遂してみせる。
さあ、次はどこへ脱獄しようか。俺のS2000と俺の胃袋が、次の獲物を求めている。






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